理事長所信

はじめに
人生100年時代と言われ始め、私たちはまだその折り返し地点にも立っていない。20歳~40歳までの限られた時間の中、会社や家族を守りながら、私たちは地域の未来の為、この組織に身を預けている。そんな想いを持った先人たちが、明るい豊かな社会の実現に向けて、64年間邁進してきた組織であり、今年創立65周年を迎える。 近年における新型コロナウイルス感染症の拡大により、人々の価値観や働き方など多くの変化が起こった。この変化は今までに無い速さで、新しい社会を創る変革期を迎えている。 「青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすための発展と成長の機会を提供する」ことを使命に活動し、変化を軸に考え、戦略的に行動と発信をする事で人が成長し、地域を活性化させる。この変革期だからこそ、一人ひとりが未来志向を持って積極的にJC活動に参画し、地域を牽引する団体としてJC運動を展開しよう。
“WAKUWAKU”を起点に
JCに入会し目的という言葉を意識するようになった。事業構築において、目的からの逆算で考える事で目的に沿うか取捨選択の意思決定する事ができる。この目的を決める際に、事業当日のあるべき姿を想像して欲しい。子供たちが夢中になって取組み、それを見た親が笑顔になっているか。メンバーが真剣な眼差しで参加し、人生観を変えるような体験になっているか。事業によりあるべき姿は異なるが、関わる人々により良い影響を与える想像こそが、事業構築の起点となる。その起点は自分自身がワクワクするものでなければならない。ワクワクするとは単純な楽しさだけでなく、気持ちが前向きであり、未来志向であること。個々が持つ価値観を未来に思い描き、人や地域にインパクトを与えよう。事業構築に限らず、JC活動における全ての発信や行動がワクワクを起点に始めることが、周囲に与える影響力を増大させ、リーダーとしての資質を向上させるのだ。
入会当初、先輩方が仕事もしながらJC活動を一生懸命やり、懇親会ではJCについて笑顔で語り合う姿がとても輝いて見えた。先輩方から見えている景色を見てみたい。その想いでJC活動に対するスイッチが入ったことを覚えてい
る。輝く強い個に惹かれ、機会を頂き、人としての器を広げてきた。この地域をよりよくする為には
”強い個”が必要である。その”強い個”に導かれ、新たな”強い個”をつくる。その連鎖反応が強靭な組織をつくるのだ。まずはメンバー一人ひとりが挑戦者となろう。そして仲間と切磋琢磨し共に輝こう。それが強い絆で結ばれた同志集まる強靭な組織になる。65周年は強い個となる輝く人材の育成に注力し、次の節目に向けて3つのビジョンを掲げる。
・ACTION~積極果敢な挑戦~
現状維持は衰退への第一歩である。その為、メンバー全員が挑戦できるステージをつくることは、この組織の起爆剤となり活性化に繋がる。挑戦とは困難な物事に立ち向かうことである。新たな事業の構築、100%の出席率、期首人数100名を超える会員拡大、諸大会の誘致など挙げればきりがない。また現状を打破する行動は、時には好奇の目で見られ、結果によっては賞賛を得られないこともあるだろう。それでは挑戦すること自体がマイナスとなる可能性がある。しかし、メンバー全員が積極果敢な挑戦者となり、失敗や批判を恐れず突き進む覚悟を持つこと、そしてその行動を取る者を支え、共に歩める同志であることを目指すことが組織の活性化に繋がる。
・BASE~満足度の高い組織づくり~
入会当初と比べ、アカデミー会員率の増加や、平均在籍年数が短くなっている事から、メンバー間の絆や例会・事業の参加意識が低くなり、例会出席率の低下が問題であると考える。まずは問題の洗い出しを行い共有しよう。そこから取り組むべき行動を起こそう。目指すは毎回100%の例会・事業の出席率である。これは単なる出席率という数字の話でなく、これを達成した状態はメンバー全員が例会・事業を自分事として捉えており、そこにはメンバー同士で高い信頼関係が構築されている状態である。すなわち会員としての満足度が高い状態であり、そのようなメンバーが多い組織を目指す。
・COMRADE~共に輝く同志の育成~
まずはこの組織に入り、受けた恩を思い出してみよう。例えば、理事を受けた経験のある者は、直属の上役から知識と経験を与えられ、人脈を与えられ、時には懇親会でご馳走になり、例会・事業構築を含めた委員会運営の成功体験を与えられたのではないか。それは上役である者も同じように恩を受けたからである。受けただけで終わりでは人材育成には繋がらず、仲間の輪も広がらない。受けた恩はしっかりと次へ繋ぐ。平均在籍年数が短くなっているからこそ、この当たり前の恩おくりが最高の人材育成となり、信頼関係が強固な同志となる。
【選ばれる組織を目指して】総務広報委員会
栃木青年会議所は外部からどんなイメージを持たれているだろうか。世間に広く認知されているだろうか。私自身入会した時は、青年会議所という団体の事を知らなかった。声を掛けられなければこの団体に入る事はなかった。入会した後も、もっと外部に認知された方が活動に対する意欲があがるのではと感じていた。一方で、メンバー自身が青年会議所は何をしている団体と一言で伝えることができるだろうか。メンバーによっては伝える言葉も異なってくる。だから広報が難しいことも理解できる。今一度理想をイメージしてみよう。もっと外部の人々にしっかりと認識されていれば、JC活動に対する賛同者が増えるわけである。それにより事業の集客や会員の増加も容易になるだろう。選ばれる組織になるという事は、すなわち次の可能性を創ることである。広報を担う委員会として、SNSなどのツールを駆使し栃木青年会議所のファンをつくっていこう。今、積み重ねた情報は後世に残る組織の資産となる。
【価値ある事業の創造】まちづくり委員会
「地域にある価値」と「潜在的ニーズ」を紐づけた事業の実施。まずはこの地域がもともと持つ価値の洗い出しを行おう。そしてその価値を最大限に活かす為には、どんなニーズと紐づけることが効果的かを考えたい。これは何がやりたいという自己本位的な事業ではいけない。栃木青年会議所は2019年よりこども習い事フェスタを実施している。これは、「地域にある習い事」と「どの習い事を習うか悩む親子」を紐づけた結果、毎年人気の事業として地域に根付いている。ただその地域の魅力とはこの地域限定的な特産物や場所だけを示してはいない。この町に元々ある魅力を潜在的ニーズと紐づける事で、価値ある事業に変換し、多くの人の笑顔を創ろう。
また、いつ起こるか分からない災害においても私たちは危機感をもっていないといけない。水害におけるボランティアセンターの立ち上げ、それに伴う支援の経験はあるが、想定しうる災害は水害に留まらない。日本は地震大国と言われ、数十年以内に首都直下型地震が起こるとも言われている。そんな事態に迫られた時、私たちに何ができるだろう。災害に備え、万が一の際にJCがどう動けるのか学ぶ事業を実施しよう。
【感謝!65周年大交流会】交流委員会
1958年9月16日創立。それから64年間という歩みを休まずに続けてきた約500名の諸先輩方、関わりを持って頂いた行政、他団体、地域住民そして仲間である他LOMの方々に感謝しよう。私はこの組織に入会した事により、多くの方々と関わりを持つことができた。これは青年会議所という組織の大きな魅力である。65周年の交流会という機会を活かせば、アカデミー会員が新たなネットワークを構築する事ができる。ここ数年大きな交流事業が出来にくい状況であった為、形式的な式典に留まらず、多くの参加者が笑顔となれるようなエンターテインメント性のある交流会を実施したい。そしてメンバーと参加者の交流の場としよう。参加者に多くの笑顔があることで、メンバーは誇りに思い今後の活動により前向きに取り組むであろう。一人ひとりがその前向きな姿勢を持つことが、メンバー内の参画意識を醸成し、組織を強固にする。
【スケールメリットを活かし視座を高めよう】渉外研修委員会
私は青年会議所に入会し、様々な機会を頂いた。LOMの理事・執行部の経験や栃木ブロック協議会の役員の経験に加え、日本青年会議所へ出向の際に取得したSDGsアンバサダーの経験。JCで頂いた機会は必ず自分に新しい経験を与え、その経験が生きる上で物事を判断する時の決め手となっている。
青年会議所のスケールメリットを最大限に享受できるのは出向である。出向にはLOMの垣根を越えて、県内、関東地区内、日本国内、そして世界各地の仲間と出会えるという魅力がある。まずは、日本青年会議所が主催する京都会議、サマーコンファレンス、全国大会の三大大会。関東地区協議会が主催する関東地区大会。栃木ブロック協議会が主催する栃木フォーラムなど、出向者が作り上げる事業に多くのメンバーで参加しよう。
また姉妹関係を締結しているマレーシアのペナン青年会議所と2019年に数十年ぶりに会う事ができた。国際組織である青年会議所が国を超えた仲間と繋がる事ができるのもこの組織の魅力である。その地域が抱える課題はなにか、そしてそれをどう解決に導くのか、どのような想いで青年会議所に所属しているのか、組織が違えば考えは違う。青年会議所のスケールメリットを活かし、メンバーの視座を高める事業を実施しよう。
【強い個が強靭な組織をつくる】拡大人材育成委員会
JCという組織の最大の社会貢献は、一人でも多くの若者に発展成長の機会を提供することで、メンバーにより良い変化を起こし、明るい豊かな町がつくられていくことである。近年では、アカデミー会員率の増加や、平均在籍年数が短くなっている事から、メンバー間の絆や例会・事業の参加意識が低くなり、例会出席率の低下を招いている。また一度理事という成長の機会を受けても次のステップに歩まず、与えられた知識と経験を次へ繋げられてない事も組織としての課題である。それ故、組織としての社会貢献が最大値を発揮できていない。この最大値を目指すのであれば、まずはメンバーを増やすこと。そしてメンバーが全ての事業・例会に参加すること、理事や出向の機会を得て、それを積み重ねてまちづくりの意識を醸成し、ひいては個人や会社やJCとして明るい豊かなまちづくりに取り組むことである。その中で理事経験者が次の人材を育成し、しっかり繋いでいくことである。それにはまず多くのメンバーの参加率をあげる事を目的とした事業の実施が必要だ。そしてメンバー間の信頼関係を構築しよう。人を動かせるのは人でしかない。愛情をもって強い個を育てよう。強い個の集合体が強靭な組織をつくる。
【新たな出会いが子供の未来を創る】青少年育成委員会
私は二児の父親である。二人の子供を見ながら、親として子供の為にできる事は何かと考える。それは目一杯の愛情を注ぐことと、成長の機会を与える事である。私がここで考える成長の機会とは、新たなヒト・モノ・コトに出会い、夢中になり、楽しさ、嬉しさ、凄さ、悔しさ、恥ずかしさ、怒りなどを味わうことである。本気で夢中になるからこそ、色んな感情を経験し子供は成長していく。そんな経験をさせてあげたい。しかしながら近年は新型コロナウイルス感染症拡大防止の為に、子供は学校での友達と会う回数が減り、行事ごとは中止となり、その機会を奪われている。その一方で、学校教育はデジタル化を加速させ、栃木市・壬生町はGIGAスクール構想の実現により、教育現場ではICTの活用がすでに始まっている。ICTの活用は、教育現場の人手不足解消へのきっかけとなるだけでなく、今までのリアルでの教育だけではできなかった新たな繋がりがデジタルで可能となる。このGIGAスクール構想と栃木青年会議所の培ったネットワークを駆使すれば、海外や全国の人々と交流する成長の機会を与えられる。また、こども習い事フェスタは構築から5年目を迎える。地域でニーズの強いこの事業にも課題が見られる。私が感じる大きな課題は、応募開始後すぐに定員締切になってしまう点である。これにより多くの子供たちが応募する事もできず、その機会を失っている。いかに多くの子供たちにこども習い事フェスタの事業を提供できるか、5年目としての矜持を持ち新たな進化を遂げよう。
【おわりに】
私は経営者の家庭で育っていない。私がサラリーマンの時に父が起業し、その事業を継ぐため28歳で栃木に戻ってきた。経営者が多い団体という声掛けを頂き、ここで何かを学びたい、この組織で登り詰めたら、自分だけでなく会社も成長できるかもしれないという期待があった。入会した目的を思い出してほしい。皆この組織に属しているという事は何かしらの益を得るために入会しているはずだ。それは会社を守る為、子供の未来を守る為、自分の成長の為、地域の発展の為、一生涯の仲間を見つける為、その理由は人それぞれ違うかもしれない。しかし、それらを得る為には、もう一歩前に出ることが必要ではないか。現状維持は衰退の一歩。人も企業も挑戦してこそ維持し、成長するものである。その挑戦する姿勢もこのJCにいる仲間から学んだ。JCが辛い時もたくさんあった。事業構築を何度も何度もやり直し、終わりが見えない苦しさもあった。ただ決して投げ出さなかった。ここで逃げてはいけない。その瞬間は苦しいもの、苦しいからこそ乗り越えた時に得られる成長と仲間がいる。苦楽を共にし、乗り越えた仲間は、志を同じくする同志と呼べよう。そんな一生付き合える同志をつくれる組織である。企業も地域もつくるのは人である。だから挑戦という階段を登り続け、共に強い絆で結ばれた同志となろう。